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2026-07-16

協賛のブランドリフト測定とは|認知・好意度・利用意向の測り方

協賛の効果報告というと、掲出時間やインプレッション数、広告換算額といった「露出量」の数字が中心になりがちです。しかし、露出は「届いたかどうか」を示すものであって、「ファンの気持ちがどう動いたか」を示すものではありません。

協賛に触れたことで、ファンの認知・好意度・利用意向がどう変化したか――この「行動変容」を検証する手法が ブランドリフト測定 です。この記事では、ブランドリフトとは何か、どう設計し、どう読むべきかを整理します。

ブランドリフトとは何か — 検証する3つの指標

ブランドリフトとは、広告や協賛への接触によって生じる、ファンの認知・態度・行動意向の変化のことです。測定の対象は、購買行動に至るまでの段階(ファネル)に対応して以下のように整理されます。

  • 認知(awareness): 企業・ブランドを知っているか
  • 好意度(favorability): そのブランドに対して好意的な印象を持っているか
  • 利用意向(purchase intent): 実際に利用・購入したいと思うか

露出量の集計だけでは、この「ファンの内面がどう動いたか」までは分かりません。ブランドリフト測定は、露出の先にある変化を可視化する手法です。

なぜ今、行動変容の測定が必要か

協賛効果の測定をめぐっては、次のような実態が報告されています。

  • 標準化された測定プロセスを持つマーケターは約37%にとどまる(=6割超が標準的な測定手法を持たない)
  • 「統合的なROIを測れている自信がある」と回答したマーケターは85%にのぼる一方、実際に測定できているのは32%にとどまる

自信と実態の間に大きなギャップがあることがうかがえます。一方で、協賛によるブランドリフトは実在する効果としても報告されています。国内の大規模調査(電通「スポーツ総合調査2025」、全国15〜69歳7,200人対象)では、企業の協賛を認知している層は、企業名の認知のみにとどまる層に比べて「好意」「利用意向」が約10ポイント高く、特に10〜20代でその差が顕著だったとされています。

測定していないから「効果がない」わけではなく、測定していないから「効果が見えていない」――このギャップを埋めるのがブランドリフト測定です。

調査設計の基本 — 曝露群×統制群と前後比較

ブランドリフト測定の基本設計は、ランダム化比較試験(RCT)の考え方に基づきます。

  1. 曝露群と統制群を分ける: 協賛・広告に接触したグループ(曝露群)と、接触していないグループ(統制群)を無作為に分ける
  2. 同じ設問で両群を調査する: 認知・好意度・利用意向など、同じ設問を両群に実施する
  3. 差分(リフト)を算出する: 曝露群と統制群の回答差が、協賛による効果(リフト)とみなされる

これに加えて、キャンペーン前後(pre/post)の時系列比較を組み合わせることで、変化の実態をより正確に捉えられます。

データを読むときによくある3つの落とし穴

ブランドリフト調査は、設計・読み方を誤ると効果を見誤ります。特に注意したいのが以下の3点です。

1. 相関と因果の混同

統制群を置かず、曝露群の数値だけを見て「協賛のおかげで数字が上がった」と判断すると、季節要因や他の施策による変化を協賛効果と誤認するおそれがあります。因果を語るには、統制群との比較が前提になります。

2. 自己申告バイアス

「評価されている感覚」を強めるような設問や導入文は、回答者を"良い回答"に誘導してしまいます。設問の順序も、後続の回答に影響を与えることが知られています。

3. 有意差(p値)の誤解

p値は「差がある確率」を示すものではなく、「その仮説のもとで今回のような結果が偶然起きにくいか」を示す指標です。サンプルサイズが小さいと、実際には意味のない差が偶然出てしまうこともあります。属性別にクロス集計する際は、各セルのサンプル数(n数)を確認することが欠かせません。

バイアスを完全にゼロにすることはできません。無作為割付・中立的な設問設計・十分なサンプル数の確保によって、調査設計の段階で最小化することが基本です。

自社で始める最小設計の型

本格的な調査会社への委託が難しい場合でも、以下の要素を押さえるだけで、精度を保ったミニマムな設計が可能です。

  • 曝露群・統制群を無作為に分ける(属性が偏らないよう配慮する)
  • 認知・好意度・利用意向の3指標を、同じ設問文で両群に聞く
  • 可能であればキャンペーン前後(pre/post)で同一設問を実施する
  • 属性別にクロス集計する場合は、各セルのn数が十分か確認する

いきなり大規模な調査を組む必要はありません。まずは自社の主要なファン層に限定した小規模設計から始め、設計と読み方の型を作ることが第一歩です。

まとめ

ブランドリフト測定は、協賛への接触によってファンの認知・好意度・利用意向がどう変化したかを、曝露群と統制群の比較によって検証する手法です。露出量だけでは見えない「行動変容」を可視化できる一方、統制群の欠如や自己申告バイアス、有意差の誤解といった読み間違いには注意が必要です。設計の基本を押さえたうえで、自社の規模に合った最小の型から始めることが、行動変容を「見える化」する第一歩になります。

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