新しいスポンサーを獲得しようとするとき、多くの担当者が最初に用意するのが提案資料です。ただ、この資料に何を載せるべきかは、意外と定まっていません。クラブの魅力やファン数を並べた資料になってしまい、相手企業の担当者が社内でどう説明すればいいのか分からないまま終わる、というケースは少なくありません。
この記事では、新規の協賛提案で使う資料に載せるべき要素と、それをどの順番で並べるかを整理します。すでに協賛いただいている企業への更新提案とは、使える材料も組み立て方も変わります。
新規の協賛提案が難しい理由
更新提案であれば、前シーズンの実績という材料があります。どれだけ露出したか、それがいくら相当だったか、前年と比べてどうか。数字を示す土台がすでにあるわけです(更新フェーズでの数字の使い方は「スポンサー更新提案に数字の根拠をつけるには」で解説しています)。
一方、新規提案には実績がありません。「協賛したらこうなります」という見通しだけで、相手に判断してもらう必要があります。
さらに、提案を受け取った担当者は、多くの場合そのまま決裁できません。上長や経営層に説明し、予算を確保するプロセスが挟まります。つまり提案資料は、目の前の担当者に向けた資料であると同時に、その人が社内で使い回せる資料である必要があります。「応援したい」という気持ちは担当者を動かしますが、社内稟議を通すのは別の材料です。
提案資料に載せる4つの要素
1. 協賛メニューと掲出箇所を具体で示す
「ユニフォーム協賛」「スタジアム看板」といった括りだけでは、相手は何を買うのか判断できません。どの位置に、どのくらいのサイズで、何試合分掲出されるのか。ここを具体的に示します。
掲出箇所によって露出の性質は変わります。中継カメラに入りやすい位置なのか、来場者の目に触れる位置なのか。前者は放送を通じて広く届き、後者は来場者という限定された層に深く届きます。どちらが良いという話ではなく、相手企業が何を目的に協賛するかによって適切な枠が変わる、という説明ができると提案の質が上がります(会場内外の広告価値の考え方は「スタジアム会場内外広告の価値算定とは」で整理しています)。
2. 想定露出のシミュレーションを示す
実績がない以上、示せるのは見通しです。ただし、根拠のない見通しは意味がありません。
過去の同等枠での実測をもとに、「この枠であれば年間でこの程度の露出が見込める」というレンジを示します。断定は避け、幅で示すのが実務的です。そして、その見通しがどんな前提に立っているか(想定試合数、中継が入る試合の本数、想定入場者数など)を必ず添えます。
前提を書いておくと、シーズン後に実績が見通しを下回った場合でも、「前提のどこが変わったか」で会話ができます。前提を書かずに数字だけ出すと、下振れたときに信頼を失います。
3. 価値換算の前提を先に開示する
想定露出を金額に換算して示すことはよくあります。金額は決裁者にとって最も分かりやすい単位だからです。
ただし換算金額は、出し方によって大きく変わります。どの媒体を、どの単価で、どう計算したか。この前提を資料の中で開示しておくことが重要です。前提を伏せたまま金額だけが提案書に載ると、その数字だけが独り歩きし、後から説明できなくなります。
また、広告換算はあくまで参考値であって、実際にその金額の支出を代替したことを意味しません。この注記を自分から入れておくほうが、結果的に信用されます(換算の仕組みと注意点は「媒体露出の価値換算とは」で詳しく扱っています)。
4. 契約後の効果測定を約束する
提案資料に書かれることが少なく、しかし差がつきやすいのがここです。
協賛が始まった後、露出をどう測り、どんな頻度で、どんな形式で報告するのか。これを提案の段階で明示します。相手企業の担当者にとっては、社内で「効果は測れるのか」と聞かれたときの答えになります。
測定の約束があると、提案そのものの信頼度が変わります。見通しを出すだけの提案は「言いっぱなし」に見えますが、実測して報告すると書いてある提案は、見通しの数字にも責任を持つ姿勢として受け取られます。
提案資料の構成順
要素が揃っても、並べ方を間違えると伝わりません。相手の意思決定の順番に沿って並べるのが基本です。
- 相手企業の課題仮説(なぜこの企業に提案するのか)
- 協賛メニューと掲出箇所(何を買うのか)
- 想定露出と価値換算・前提つき(どれだけ届くのか)
- 効果測定と報告の約束(後で確かめられるのか)
- 金額と契約条件(いくらか)
多くの提案資料は、冒頭にクラブ紹介やファン数、歴史の説明を厚く置きます。しかし相手が知りたいのは「自社にとって何が得られるか」であり、クラブの情報はその判断材料として必要な範囲で足りることが大半です。自社紹介は必要ですが、分量の配分は見直す価値があります。
よくある失敗
数字を盛る — 想定露出を強気に置くと、初年度の実績報告で必ず逆風になります。レンジで示し、下限も見せるほうが長く続きます。
換算の前提を出さない — 金額だけの提案は、相手の社内で「その数字の根拠は」と聞かれた瞬間に止まります。
測定を約束しない — 協賛後の報告設計がないと、更新のタイミングで示せる材料がなく、翌年の提案がまた「見通しだけ」に戻ります。
メニューが抽象的 — 「ユニフォーム」「看板」だけでは比較検討ができず、相手は他社提案と並べられません。
まとめ
新規の協賛提案には実績がありません。だからこそ、提案資料に必要なのは派手さではなく、見通しの根拠と、後から確かめられる約束です。
協賛メニューを具体で示し、想定露出を前提つきのレンジで出し、換算の計算根拠を開示し、契約後の測定を約束する。この4つが揃った資料は、相手企業の担当者がそのまま社内説明に使えます。提案資料の役割は、その人の社内会議を代わりに通すことだと考えると、載せるべき内容は自然に決まります。

